Re:Innovate Japan 滞りのない未来を創造するため

地域の一員として、企業にできること~富士通Japanに訊くワーケーション・地域DX プロデュース事例レポート~

2021年11月に内閣府沖縄総合事務局とワーケーション連携協定を締結した、富士通Japan株式会社(以下、富士通Japan)。地域におけるDX推進のために企業がどのように動いているのか、沖縄でのワーケーションなどの事例を、モデレーターの森戸裕一が富士通Japanと富士通株式会社(以下、富士通)からお迎えしたゲストとディスカッションしながらお聞きします。


登壇者:
松本 国一さん
富士通株式会社 シニアエバンジェリスト

本中野 貴さん
富士通Japan株式会社 九州エリア本部 沖縄支社 支社長

森戸 裕一(モデレーター)
一般社団法人シェアリングエコノミー協会 九州支部長
一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 代表理事

藤川 由樹さん(MC)

富士通グループがワーケーションに取り組む背景

森戸:2021年に、地域での課題解決に向けて、デジタルを用いた取り組みを可視化していって、それのいいところを他の地域でもどんどん横展開していく「デジタル田園都市国家構想」をデジタル庁が打ち出しています。そこでまず私たちは、富士通Japanや富士通、本土復帰50周年を迎えた沖縄での、地域課題解決に向けた取り組みにフォーカスして、本中野さんと松本さんにいろいろお聞きしたいと思っています。まずは本中野さん、沖縄での取り組みをご説明いただけますか。


本中野さん:「ワーケーションを通じて沖縄を第2の故郷に」をコンセプトに、沖縄地区のメンバーが立案しました。今後増えていくと予想される副業やワーケーションに、関係人口の増加を狙いながら、沖縄の中小企業さんや1次・2次産業が抱える課題、沖縄特有の課題に応えるサービスや仕組みを検討していきたいとの思いが、企画の背景にあります。もともと富士通Japanが発足した昨年4月に沖縄のメンバーと企画してたんですけれども、ちょうど同じタイミングで沖縄総合事務局さんから、「ワーケーションの企画を考えていきたい」というお話がありまして。


そこで昨年11月13日~28日の「ワーケーションウィークオキナワ(Workcation Week Okinawa)」の開催に合わせて沖縄に来ていただいた方々に、沖縄支社のメンバーが、ワークショップやいろんなプログラムを企画・実施しました。自分自身のお仕事の傍ら、地域の方々が持たれてる課題解決のお手伝いをしていただくことが狙いで、ワークショップの実施には、読谷村さんと宮古島市さんにご協力いただきました。



松本さん:富士通は全従業員のうち8割が既にテレワークに取り組んでいるので、もともとテレワークが当たり前という文化がありました。私は場所にこだわる必要はなくて、どこでもいいのであれば、ワーケーションを実施している地域に行って仕事をしてもいいと思っています。


富士通では過去には出張の場合、「指定期間内の移動と宿泊については許可するけど、そのまま出張先に留まることは認めない。出張が済んだら帰ってきなさい」という決まりになっていました。しかし今、上長が許可すれば出張先に1~2週間残っててもいいよっていう制度に変わっています。具体的には、例えば現地で2~3日仕事をしながら現地の方々と交流とか、現地課題の解決への手伝いを目的としていれば、ワーケーションの許可を出しています。


企業の利益確保よりも、10年後の地域のために

森戸:先日、デジタル庁の村上統括官、富士通の中山理事と登壇して情報交換しました。そのときにデジタル庁の村上統括官が「民間企業は当然利益を求めなきゃいけない。でも民間企業と官民連携で何かをするとなったときに、短期で利益をきちっと確保しなきゃいけないのか、中長期で利益確保を考えるのか。デジタル田園都市国家構想はわりと中長期で考えてもらわないと、取り組めないところってありますよ」っていうニュアンスの言葉を何回か挟まれたんですよね。


要するに国も自治体も場は作るんだけど、すぐそこで商談とかすぐ物を売りたいって話になってくると、地域に新たにビジネスで参入してくる企業はなかなか地域ベンダーの仲間に入れないと。でも本中野さんの今の話でいくと、今年度はそういう場に参画するところが狙いであって、次年度以降は、先程紹介いただいたようなワークショップの機会を設けて、その場で明確になった地域の課題を一緒に解決していくという理解でよろしいですか。



本中野さん:
ご存じの方もいるかもしれませんが、来年度から沖縄では新たな振興計画が施行されます。それに沖縄支社としてのパーパス、存在意義を照らし合わせて、10年後の沖縄を想像して富士通Japanの沖縄支社が何を目指してどういうことをやっていけばいいのかを、今年度の上期に沖縄支社のメンバーでディスカッションしました。そこで出された意見を反映したのが、ビジョンマップ2030です。


ビジョンマップ2030をもとに、今年度下期から始めているのが、地域価値創出へのさまざまなご提案です。今回は読谷村さんと宮古島市さんでしたが、提案の際にはビジョンマップをお見せしながら、「お客様ご自身のこういうマップ、目指す姿を我々と一緒に作りませんか。沖縄の10年後のために今我々ができることを具体的にお手伝い、支援していきますので、一緒に取り組みませんか」とお声がけしています。


ここから何かしら我々のビジネスにつながるものが出てくれば、そこは当然お客様にご提案しますし、それ以外のところでも、目指すべき姿に向けてプロモーションしていくという活動を今進めています。



森戸:自治体のビジョンって、住民に正しいことを示さなきゃいけないから、行政用語を用いてて、「住みやすい街を作ります」とか、治安がどうのこうのとか書かれてるんですよね。でも全部文字ばかりだから、確かにイメージがつかないしワクワクしないと思うんですよ。なので、ビジュアル表現っていうか、絵とか写真とかで示していければいいのかなと。

とはいえ、自治体から「ビジョンを絵で描いてください」って急に言われてもなかなか難しいんで、彼らが書いた文章を一緒にビジュアルに表現していくのは、非常にいい取り組みだと思うんですけど、松本さんここらへんって、富士通全体としてどう取り組んでるんですか。



松本さん:まずこういうビジョンマップの作成は、今沖縄地域だけでなく、他の地域も当然ながら取り組みとして進めようとしています。


デジタルトランスフォーメーションっていうものを考えた際に、最初に重要なのは未来像、ありたい姿をきっちりと描くことです。それを実現するためには、どうしてもビジョンマップみたいなものが必要になってくるんですよね。


ビジョンマップをお客様と共有しながら、課題解決を進めようとしている部署は、富士通内に実際に結構多くあります。この動きは、地域だけでなく業種でも起こっていて、沖縄地域のビジョンマップを他の地域でもどんどん真似ていって欲しいなと思います。

地域のありたい姿をビジュアル化し、地域に関わる全ての人の思いを一つに

森戸:それで本中野さん、沖縄でビジョンマップ2030で見せていきながら、どういうふうな展開をこれから作っていかれるんですか。



本中野さん:大きくは2つです。まずは我々がどういう思いで沖縄のマーケットに取り組んでいるかを、沖縄の皆さまにご理解いただくこと。でこういう取り組みを、今お付き合いさせていただいてるお客様にも共有して、お客様とのやり取りの中で明確化した課題解決をビジネスにつなげる取り組みに持っていくことです。


森戸さんからもあったように、ちょっと時間はかかるけども、地域の課題解決を地域の人とともにやらなくてはならないという認識を私自身持っています。既存領域のビジネスともバランスを取りながら、目指す姿に向かって取り組みを推進することが重要なんじゃないかなと率直に感じています。



森戸:質問がきています。「お客様の現場部門の課題と、地域の市民の課題の両方の解決」。多分時間軸も視点も違うんで、これを両方、同時並行に富士通さんが解決するのはちょっと難しそうですよね。


もう1つ、同じ方から「コロナ禍でワーケーションを富士通でやる際に現地の地盤である他のベンダーとどう調整したか気になります」って質問が来ています。これは先程のデジタル庁の村上さんがおっしゃったことで、今まで国のシステムや自治体は、短期で利益を丸取りするっていうことを前提に富士通というか企業が攻めてきていたと捉えていたんですよね。でも今は敵だった方も含めて国産、外資、IT企業・非IT企業関係なく、みんなが共通の場に集まってきて、それぞれができることを合わせていくことで変容変革をしていくことを目指している。こういうのが地域のDX、デジタルトランスフォーメーションであり、デジタル田園都市国家構想で狙うところなんですけど、そこら辺って松本さんどう思われます?



松本さん:そうですね。DXって現場の課題解決ですが、富士通が持っているソリューションで全部解決できるかって言ったら、当然そんなことはありえません。現場の課題解決には地域の課題に近いベンダーの方々、他の業者の方々との連携が必要不可欠です。

一緒に連携していこうよって言葉だけでは、皆さんがバラバラな思いで進んでしまうので上手くまとまらないんですよね。皆さん同じ方向に向いて、ビジョンを明確化するためには、ベンダーや業者の方々の意見の取りまとめをしっかりとやらなければならない。そのまとめ役を、ぜひ現地の支社を挙げてやっていただくのがいいんじゃないかなと私は思っています。



ありたい姿を示すための情報発信とDX

森戸:個人のSNS使用に関して、今までコンプライアンスとかいろんな事情で大手企業が二の足を踏む中、SNSも含めて自らが発信した情報に従って行動する形にしていかなきゃいけないと思うんですけど、そのあたりで富士通の最近の変化とか、こんな活動し始めたんですよみたいな話、松本さん何かありますか。


松本さん:そうですね。メディアリテラシーという意味合いでは、もう各個人でよろしくお願いしますっていう感じになっています。ただ、ITベンダーってコアな情報を扱ってるので、外に情報を出すと漏洩なんじゃないかって思われるケースが非常に多いんですよね。


DXとは何ですかって言ったらありたい姿を実現することなんですが、よくデジタルを導入して何か仕組みが変わったっていうものをDX(デジタルトランスフォーメーション)だって言われるケースも多いんです。富士通の場合はどちらかというとトランスフォーメーション、変革の部分を重要視しています。従業員が一人ひとりきっちりとトランスフォーメーションをしましょう、そのためにデジタルが必要なのであればDX(デジタルトランスフォーメーション)して、デジタルを使わなくてもトランスフォーメーションが実現できるのであれば、働き方改革をすればいいですよねと。


IT企業からDX企業に変わろうとする今、ありたい姿やそれを実現するプロセスを明確化するために意識を変えようという動きが、富士通の従業員の中でどんどん生まれてきています。


森戸:なるほどなるほど。地元の方々とかお客さんに対してこういうことをやりますっていうのと、存在価値だったりとか自分たちが何を大切にしてるかっていうところが多分会社のパーパスと、自分が仕事を通じて社会に対してどういうふうに役立ちたいのかとか自分の人生においてどういうことを遂げたいのかっていう、個人のパーパスを表に出しながら、地域課題解決にチャレンジしていく形に実は今どんどん変わってきてるという理解でよろしいですか。



松本さん:そういう理解でいいと思います。地域でDXを進める以上は、相手側と一体となっていろんなことを進めていく必要がありますし。そもそも自分の顔が見えなければ相談もしづらいですし、相手からの信用も得られません。


地域の方々にきっちりと顔を見せて、自分の考え、パーパスみたいなものをきっちりと提示して、相手側から信用を得て課題を解決していきましょうっていう流れは非常に重要なことです。地域の方々からの信用を得られれば、それだけいろんな相談に乗れますし、地域の課題解決に貢献できます。沖縄ではビジョンマップを持って、各個人のパーパスをきっちりと説明しながら、あっちこっちの自治体さんとつながってるようですから、非常にいい方向で進んでいるんじゃないかなと思います。

地域課題解決に向けた、継続的な仕組みづくり

森戸:松本さんと本中野さんから最後に一言ずついただいて、クロージングにいこうと思いますけれどもいかがでしょう。



松本さん:ここまで、地域のDXとかいろんなことを語ってきましたけど、結局のところ一番重要なのはやっぱり地域課題の解決であって、それをしっかりと見ていくためには支社がものすごく重要だと私は思っています。


ただ全体のシステムを見て全体を一気に変えるのは日本では難しいので、全体のシステムを変えるためには地域からスタートしてもらわないと、上手くいかないところも多いと思います。


まずは沖縄や九州、北海道とそれぞれの地域にある支社のメンバーがしっかりと密着して地域の人から相談を受けつつ課題を見つつ、ともに解決していければ多分日本は今よりも非常に良くなるはずです。そのためのエンジンとして、まさに本中野さんが今沖縄で奮闘されてます。エバンジェリストはそのスターター役として連携や支援を行います。今後も沖縄支社はじめ富士通の動きに注目していただければと思います。



本中野さん:今日はこういう機会をいただいてありがとうございました。特にビジョンマップに関しては私の思いから始まったことではあるんですけど、組織としてこういうことを継続していくべきだという観点で、沖縄支社として人を中心に活動だけではなくて、継続できる組織としての仕組みづくりをすることが、ワーケーションや地域課題解決の肝だと思っています。


今後も沖縄支社のメンバー中心に、その他いろんな方々のご支援をいただきながら推進していきますので、引き続きよろしくお願いします。

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